社会福祉士の役割と養成カリキュラムの見直しの方向性について

厚生労働省、社会福祉士の役割と養成カリキュラムの見直しに着手

厚生労働省では、地域共生社会の時代を見据えた社会福祉士の役割と養成カリキュラムの見直しに着手しています。

2017年10月24日に開催された社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会において、「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」検討を行うとともに、2020年度から社会福祉士養成の新カリキュラム導入を図る考えを明らかにしています。

以下では、厚生労働省が検討している、これからの社会福祉士に求められる役割と養成カリキュラム見直しの方向性をまとめます。

地域共生社会の実現に向けた社会福祉士のあり方

「地域共生社会」という言葉がこれからの福祉のキーワードとなっていますが、今回の社会福祉士の役割と養成カリキュラムの見直しも、「地域共生社会をいかに実現するか」という視点から行われるものです。

地域共生社会とは、安倍内閣の「ニッポン一億総活躍プラン」において、

「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」を実現する」

という文言で示された地域社会のあり方ですが、厚生労働省では「我が事・丸ごと地域共生社会実現本部」を立ち上げたうえで「地域力強化検討会」による報告書をとりまとめ、地域共生社会の創出とは「地域づくりの取り組みが文化的として定着するような挑戦」であるとして、以下のような見解を示しています。

「それぞれの地域で社会的孤立や社会的排除をなくし、誰もが役割を持ち、お互いに支え合っていくことができる地域共生社会を創出することは、高い理想であり、思うように進まないこともあるかもしれないが、個の課題と向き合う中で他人事と思えない地域づくりに取り組むことなどを通じて、あきらめることなく、それが文化として定着するよう挑戦し続けていくことに価値があるのである。」

住民が主体性を持ちながら地域づくりに関わり、その中で支援を必要としている人へ必要な対応が取られるように、行政や福祉事業者などが専門性を発揮しながら支えていく実践の積み重ねが求められているといえます。

そして、このような議論の中で、社会福祉士のあり方についても見直しが必要とされるようになりました。

2つの役割~「地域住民のエンパワメント」と「地域住民の活動支援と関係者との連絡調整」~

社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会の資料によると、地域共生社会の実現に向けて、社会福祉士の果たすべく役割としては、大きく分けて「地域住民のエンパワメント」と「地域住民の活動支援と関係者との連絡調整」という2つが挙げられています。

(1)地域住民のエンパワメント

(以下は「社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会2017年10月24日資料」より抜粋。赤字部は筆者による。)

地域住民のエンパワメントにおいては、「問題意識の醸成」及び「地域住民の強みの発見と活動機会の創出」が重要であり、具体的には以下のような実践が求められる。

① 福祉課題に対する関心や問題意識の醸成、理解の促進、普遍化

● 住民主体による地域の福祉課題の解決に向けた活動を促すためには、地域住民自らが福祉課題の存在に気づき、何とかしたいという意識を醸成しつつ、個人の課題として捉えるのではなく、地域の課題として捉えていくような働きかけが必要である。

● そのため、社会福祉士には、地域住民と一緒に「考える、学ぶ、体験する、理解する」という過程を共有するため、地域の福祉課題に関心を持つ人を増やし、住民の何とかしたいという動機を引き出すとともに、地域全体で住民が主体となって課題を解決しようという意識を醸成し、行動変容を促していく役割を果たすことが求められる。

● こうした役割を果たすため、社会福祉士には、他の専門職や関係者と協働し、地域の福祉課題を把握し、地域住民の理解を促すための働きかけを行い、住民が主体となって地域の関係者と協力しつつ福祉課題の解決に向けて取り組んでいけるようにするための知識と技術を統合し、実践する能力が必要となるのではないか。

② 地域住民の強みの発見と活動機会の創出

● 地域の課題の解決に向けて、当事者を含めた地域住民のエンパワメントを推進していくには、全ての人がストレングスすなわち強み(例えば、性格、技能・才能、関心、環境、経験、趣味、人間関係等)を有しているという考え方を認識し、自分にもできることがあるということに気づき、その強みを活かすことが重要である。

● また、地域においては、「支える側」の人が「支えられる側」となることもあり、「支えられる側」の人が「支える側」になることもある。例えば、障害がある人が自らの経験や苦労、工夫や達成したことなどを学校や企業等で講演を行ったり、当事者団体やグループを立ち上げて支援する立場になったりするなど、「支えられる側」であった当事者から地域住民や団体等が学ぶような事例は多く、そのような機会を創出していくことは重要な取組である。

● このため、社会福祉士には、他の専門職や関係者と協働し、地域住民のアセスメントを行い、地域住民が自分の強みに気づくことができるように働きかけるとともに、強みを発揮する場面や活動の機会を発見・創出する役割を果たすことが求められる。また、地域住民が強みを発揮する分野は保健・医療・福祉にとどまるものではないため、雇用・就労、住まい、司法、教育、環境、農業、産業などの多分野での活動も視野に入れた連絡・調整など、触媒としての役割を果たすことが求められる。

● こうした役割を果たすため、社会福祉士には、他の専門職や関係者と協働し、地域住民が自分の強みに気づき、前向きな気持ちややる気を引き出すための働きかけを行うことによって、実際の活動につなげ、成功体験を積み重ねていくことができるようにするための知識と技術を統合し、実践する能力が必要となるのではないか。

● また、地域住民の役割は固定されるものではなく、状況や時間の経過とともに役割は入れ替わったり循環したりするということを理解した上で、地域住民が活動する場面や機会を発見・創出するとともに、様々な分野とのネットワーキングを図るための知識と技術を統合し、実践する能力が必要となるのではないか。

つまり、地域住民に対する啓発活動を行うとともに、地域住民が自らの実践の成果を確認できるとともに、その成果を他者と共有できるような場を創出できるコーディネート能力・企画運営能力が必要とされています。

(2)地域住民の活動支援と関係者との連絡調整

(以下は(1)と同様)

地域住民の活動支援や関係者との連絡調整においては、「グループや組織等の立ち上げ及び立ち上げ後の支援」、「拠点となる場づくり」、「ネットワーキング」が重要であり、具体的には以下のような実践が求められる。

● 地域住民が地域課題の解決に向けて新たにグループや組織等を立ち上げる場合には、住民の身近な圏域に、誰もがいつでも気軽に立ち寄ることができるような活動拠点を作ることや、組織の経営や管理運営について助言や支援を行うとともに、必要に応じて地域住民の要望に合致した社会資源につなぐこと(雇用・就労、住まい、司法、教育、環境、農業、産業等の多分野とのネットワーキング)が重要である。

● このため、社会福祉士には、立ち上げ時において、活動に必要な人材や財源の確保の方法、広報や情報提供の方法、他機関との協働などに関する要望や悩み等のニーズを的確に把握して助言を行うとともに、立ち上げ後においても、会議運営の支援、財源の確保への助言、所属団体の間の関係調整、地域課題の情報提供、市町村圏域の包括的な相談支援体制への連絡調整などの役割を果たすことが求められる。

● こうした役割を果たすため、社会福祉士には、他の専門職や関係者と協働し、住民主体の考え方に基づき、個人の問題意識を地域住民や組織等による活動に展開するためのグループワークを実施し、立ち上げ前後において、組織の経営や管理運営、経過観察、バックアップなどの助言や支援を行うための知識と技術を統合し、実践する能力が必要となるのではないか。

ここでは、住民による活動の支援を持続的に行えるように、活動組織の立ち上げや経営などをサポートするための調整能力にも言及がされています。

新カリキュラムの方向性

では、これらの能力を養成するために、新カリキュラムではどのような方向性が検討されているのでしょうか。

委員会では、以下の視点で議論がなされています。

● 現行カリキュラムへと見直しがなされた2007年以降の様々な分野での制度改正を理解すること

● 多様化・複合化するニーズに対応して、他分野・多職種との連携を一層進めることができるようにすること

● 個人、世帯、集団および地域のニーズの発見およびアセスメントができるようにすること

● 分野横断的な社会資源の調整および支援体制・地域づくりができること など

カリキュラム見直しの議論は現在進行中ですが、福祉制度の最新動向の理解、雇用・就労や住まい、司法、教育といった幅広い分野に関する知識の習得、地域の具体的なニーズを調査・把握できる実務能力およびその経験を積む実習の場の確保、などが具体的な項目として検討されていくものと思われます。

新カリキュラムの導入スケジュールとしては、

① 2018年3月までに方向性をまとめ、

② 2018年度中にカリキュラムの詳細を固め

③ 2020年度から導入する

ことが想定されておりますので、2020年度以降に養成校に通うことになる方は、新カリキュラムの検討経過について注視していく必要がありそうです。