地域の発展は法人の発展~社会福祉法人一燈会(神奈川県開成町ほか)の紹介~

地域の発展は法人の発展 ~高齢から障害、在宅医療へのつながり~

社会福祉法人 一燈会(神奈川県足柄上郡開成町ほか)

 

社会福祉法人改革が実施される中で、社会福祉法人のマネジメントのあり方や、地域との関わり等が根本的に問われている。

そのような中で、地域において求められるサービスを実施することが、法人の発展につながっているモデルとなる法人として紹介するのが社会福祉法人一燈会である。

神奈川県西部の二宮町での高齢者福祉事業を皮切りに、地域のニーズに応える形で事業展開を加速し、近年では障害児・障害者福祉の事業も実施するようになっている。さらには、医師を招いて医療法人を設立し、地域医療における貢献も視野に入れている法人である。

今回は、その事業展開と経営にかける思いに焦点をあてて紹介する。

開成町にあるサポートオフィス。法人本部機能を集約している。

高齢者福祉を中心に法人としての規模を拡大

社会福祉法人一燈会が設立されたのは、1989(平成元)年5月であり、翌年の6月に法人初の施設「メゾン・二宮(特別養護老人ホーム)」を開設している。

介護保険制度創設の10年前であり、高齢者福祉の量的・質的拡充が課題とされている時期であったが、創設者である山室清氏は「豊かなホスピタリティとは何か?」、「福祉はサービス産業ではないのか?」という自身の思いを形にすべく、法人設立・施設開設に取り組んだとのことである。

施設は順調に運営を重ね、開所時は入所定員50名、一時入所8名であったが、3年後には入所定員95名、一時入所15名へと増築している。

2000(平成12)年の介護保険創設前後の時期から、メゾン・二宮以外の事業が次々と立ち上がり、老健施設のグレースヒル・湘南、湘南二宮在宅介護支援センターさくら(二宮町委託事業)、高齢者支援センターさくら、湘南二宮訪問看護ステーション花水木などの事業を相次ぎスタートさせている。

【一燈会グループの歩み】(法人ホームページより)

1989(平成元)年
1990(平成2)年

1990(平成2)年

1993(平成5)年

1997(平成9)年
1997(平成9)年
1999(平成11)年

1999(平成11)年

1999(平成11)年

1999(平成11)年
1999(平成11)年
2000(平成12)年


2001(平成13)年

2003(平成15)年

2003(平成15)年

2003(平成15)年
2004(平成16)年
2004(平成16)年

2004(平成16)年
2004(平成16)年

2004(平成16)年
2005(平成17)年
2006(平成18)年
2006(平成18)年

2008(平成20)年

2009(平成21)年
2009(平成21)年
2010(平成22)年
2011(平成23)年
2012(平成24)年
2012(平成24)年
2013(平成25)年

2013(平成25)年

2013(平成25)年

2015(平成27)年


2015(平成27)年
2016(平成28)年
5月22日
6月16日

9月1日

4月1日

4月
6月
2月16日

3月1日

7月1日

10月
12月1日
4月1日


3月1日

4月1日

5月

9月1日
1月1日
3月

5月1日
9月1日

10月
9月1日
3月1日
4月1日

9月1日

7月1日
9月1日
11月1日
11月1日
4月1日
5月1日
10月1日

11月11日

11月25日

7月1日


9月1日
11月1日
社会福祉法人一燈会 厚生省の認可を受ける
介護老人福祉施設メゾン・二宮 開所
入所定員50名 一時入所8名
介護老人福祉施設メゾン・二宮デイサービスセンター
事業開始 利用定員1日15名
介護老人福祉施設メゾン・二宮増築 入所定員95名
一時入所15名ケアセンター展望風呂オープン
介護老人福祉施設メゾン・二宮 新館浴室オープン
まごころ介護ショップマザー開店
介護老人保健施設グレースヒル・湘南開所
入所定員73名
介護老人保健施設グレースヒル・湘南
デイケアサービス事業開始 利用定員1日30名
湘南二宮在宅介護支援センターさくら
(二宮町委託事業)オープン
高齢者支援センター さくら開所
湘南二宮訪問看護ステーション花水木オープン
高齢者支援センター たんぽぽ 開所
(グレースヒル・湘南内)
湘南二宮ヘルパーステーションさくら オープン
介護老人福祉施設メゾン二宮 入所定員の変更
入所98名 ショートステイ12名
介護老人福祉施設メゾン・二宮 デイサービス
センター 利用定員の変更 利用定員1日30名
デイサービスセンター丸太の家(認知症専用)開所
利用定員1日12名
在宅総合センターはなの杜オープン
グループホームはなくらぶ開所 入居定員9名
デイサービスセンターはなの詩(認知症専用)開所
利用定員1日10名
高齢者支援センターはなの詩開所
グループホームはな畑 開所 入居定員9名
デイサービスセンターはな畑 開所 利用定員1日10名
グループホームはなの里 開所 入居定員18名
湘南二宮訪問入浴サービスはなの杜開所
グループホームはなの家開所入居定員18名
介護老人保健施設グレースヒル・湘南増築
入所定員136名
理事長(山室清)が会長へ、常務理事(山室清彦)が
理事長へ就任
グループホームはなの路 開所
高齢者専用賃貸マンション ザ・プライム 開所
ザ・プライム 特定施設入居者生活介護を併設
ザ・プライム 特定施設入居者生活介護を10部屋追加
地域密着型介護老人福祉施設 メゾン・開成 開所
高齢者支援センター はなの詩 新設事務所 開設
特定施設入居者生活介護 ザ・中井プライム
短時間デイサービス リハビリSPA開所
二宮町の管理部機能を開成町に移し、サポート
オフィスとして開設
高齢者支援センター「さくら」が旧管理部事務所
へ移転
高齢者支援センター「はなの詩」がケアプラン
「はなの詩」となり、事務所を開成町宮台から
吉田島へ移転
放課後デイサービス「トゥモローランド」開所
生活介護「トゥモローランド」開所

その後も介護保険事業を増やしながら、2008(平成20)年には、現理事長の山室清彦氏が就任し、リハビリSPAやロボットのペッパー導入など、介護サービスの新しい形を常に追求している。

グループホーム「はなの路」ではペッパーがお出迎え。法人全体で3体のペッパーを導入。

2015(平成27)年には、障害児支援の事業所である放課後デイサービス「トゥモローランド」を開設し、高齢者福祉以外の事業分野に進出をした。

この間一貫して法人が掲げている方針が、「地域のニーズに応えて、一人でも多くの方の役に立つ」ということであり、介護の現場でも障害児支援の現場でも、目の前にいる利用者としっかりと向き合うことを重視している。

「人財」の採用・育成に注力し、ミャンマーからの技能実習生も受け入れ

一燈会が法人運営の基本として据えているのが人材採用・育成である。

創立者である山室清氏の言葉を引用すると、「職員を第2のお客様、そして人財」と考え、働きやすくやりがいの持てる職場環境づくりに取り組んできた。

介護ヘルパースクールや介護福祉士受験対策応援サポートシステムなどの手厚い研修支援を実施しており、職員の専門性向上に役立てている。

また、よいサービスの提供には、自らが意思決定し、実行できる集団づくりが欠かせないとして、仕事の中でのチャレンジを奨励し、職員の成長を後押ししている。理事長が職員に対して掛ける言葉は、「どんどん失敗しろ!」である。

2013(平成25)年には、法人本部を再編し、人材採用や育成に関する業務を専門に行うサポートオフィスを開設し、採用・育成・職場環境づくりまでの幅広い職員サポート業務を実施している。

【一燈会における職員サポート業務概要】

職員採用
 ・2014(平成26)年から、定期的な新卒採用開始(大卒、高卒。採用開始からの離職者0)
 ・内定後のフォローを充実(研修やイベントへの参加)
 ・24時間365日相談できる先輩職員の配置
 ・キャリアプランとサポート体制の明示
人材育成
 ・介護職員初任者研修(未経験者向け)
 ・リハビリスタッフによる研修
 ・こども参観日(親の活躍する姿を見学)
 ・外部講師による新人研修
 ・人材育成専門スタッフの配置(リアルタイム相談含む)
職場環境づくり
 ・懇親会・交流会
 ・スポーツ実施・観賞の奨励
 ・外部の研究会やコンテストへの積極的な参加
 ・職場内結婚の実績多数

また、2017(平成29)年の11月からは、ミャンマーの技能実習生4名を受け入れる予定となっている。受け入れに当たっては、理事長自らが同国を訪れ、実習生の自宅を訪問して親族に挨拶をして、丁寧な関係づくりを行っている。

そこでは、単純に労働力として受け入れるのではなく、日本の介護の仕組みや方法を学んだ経験を、母国に戻った後も生かせる人材になって欲しいという法人の意向をしっかりと説明している。

マーケティングを本格的に学び、高度な専門性を実践に活かす

また、マーケティングに本格的に取り組んでいる数少ない社会福祉法人という特徴もある。

サポートオフィスにマーケティング専属の担当者を配置するとともに、常務理事を始めとする経営幹部が外部のセミナーを受講して、高度な専門性を身に付けている。

常務理事である山室淳氏は、一燈会におけるマーケティング実践の姿勢として、「『社員を幸せにすることを通じて地域や社会に貢献する』という経営の目的を果たすために、手段としての利益を確保するためのマーケティングを最大限に活用する」ことを挙げる。

利益を上げることが目的ではなく、いかにニーズに合わせたサービスを開発し、そこに職員が自主的なアイデアを加味して、利用者に喜んでもらうことができれば、社会福祉法人の経営として成功していると考える。

【一燈会のミッションとビジョン】

具体的な実践内容としては、利用者本人や家族、あるいはケアマネジャーなどの関係者への聞き取りによりニーズを把握し、サービスの改善や新たなサービスの開発に取り組むとともに積極的な情報発信を行い、実施した結果について各種会議で検証する、というPDCAのサイクルに沿った取り組みを継続している。

一燈会のミッション・ビジョン、マーケティング戦略について語る山室常務理事

マーケティングに取り組み始めた当初は、「ケアマネジャー等への営業を要請することに対する現場からの抵抗もあった」(マーティング担当:石井一之氏)という状況であったが、デイサービスや特定施設の利用者が増加して実績が上がるようになった今では、各事業の管理者もマーケティングの重要性を理解して、積極的に集客に活用している。

【一燈会におけるマーケティングの実践】

障害サービスを開始。開始後半年で人気の事業所に

高齢者福祉を中心に事業を展開してきた一燈会にとって、転機となったのが2015(平成27)年の放課後デイサービス「トゥモローランド」の開設である。

同サービスに対する地域のニーズがあることは把握していたが、障害児支援という新たなサービスを手掛けることには「正直、大変な不安があった」(山室常務理事)という。しかし、一燈会の強みであるチャレンジ精神を発揮して開設に至ると、半年も経ないうちに利用希望者が定員を上回る人気事業所となった。

同事業所が躍進するきっかとなった要素として、脳科学に基づく運動プログラムの提供がある。子どもたちが、トランポリンや跳び箱などで楽しく体を動かしながら、感覚や認知機能の向上につなげる狙いをもって実施している。また、作業療法士を配置して、一人ひとりの発達状況に合わせた個別訓練も実施されている。

子どもたちの成長ぶりが注目され、特別支援学校の教諭が視察に訪れることもしばしばである。また、作業療法士が地域の子育て支援センター等に赴き、気になる子どもの理解についての講演も実施するなど、地域の関係者からも注目される存在となっている。

トゥモローランドでスタッフと一緒に一日の流れを確認してから、運動プログラムに取り組む子供たち

また、制度改正により求められるようになった個別支援計画の作成についても、開設当初から実施しており、保護者にも丁寧に説明をすることで信頼につなげている。

一燈会では、本事業所をきっかけに、障害福祉の事業所を増やしており、生活介護事業所の「トゥモローランド」を2016(平成28)年の11月に開所している。さらには、放課後デイサービスをもう1か所と就労継続支援B型事業所の合築施設を2017(平成29)年10月に開設予定としている。

これまでに地域の中で手薄であった障害福祉サービスの分野でも、地域貢献を進めている。

医療法人を設立し、在宅医療でも地域に貢献

また、2017(平成29)年には、グループ法人として医療法人あじさい会を設立した。介護に加えて医療も提供することで、終末期に至るまでの高齢者へのサポートを充実させていくことを目的としている。

現在は、訪問診療にとどまっているが、2019(平成31)年にはクリニックと高齢者住宅を合致した施設を整備し、地域医療に貢献していく予定である。

新たに院長として赴任した高田龍介氏は、消化器内科での専門的な診療経験を活かしながらも、地域において高齢者を支えるために、医療・介護が有機的につながるシステムづくりに意欲を燃やしている。

クリニックにおける専門的な診療機能と、認知症や低栄養状態など高齢化に伴う悪循環を改善させていくサポート機能を持つ訪問系サービスを併せて提供することで、地域医療の底上げに貢献したいと述べる。

あじさいクリニックの院長に就任した高田龍介先生

【一燈会グループ施設一覧(医療法人あじさい会を含む)】※2017(平成29)年7月現在

二宮町
 ・特別養護老人ホーム メゾン・二宮
 ・湘南二宮デイサービスセンター はなの杜
 ・グループホーム はなの家
中井町
 ・介護老人保健施設 グレースヒル・湘南
 ・認知症高齢者専用型デイサービスセンター 丸太の家
 ・グループホーム はなの里
 ・有料老人ホーム ザ・中井プライム
 ・短時間型 リハビリSPA
開成町
 ・サービス付き高齢者住宅、特定入居者生活介護 ザ・プライム
 ・グループホーム はなの路
 ・小規模特別養護老人ホーム メゾン・開成
 ・放課後デイサービス トゥモローランド
 ・生活介護 トゥモローランド(宮台)
 ・医療法人あじさい会 訪問診療あじさいクリニック
平塚市
 ・デイサービスセンター はな畑
 ・グループホーム はな畑

「決断する勇気」で、新たな福祉のあり方を拓く

一燈会が本部を置く開成町は、神奈川県内の市町村別人口増加率でトップに立っている。

人口減少社会という今日の状況下では珍しく、人口増加に伴い医療・福祉サービスの充実も求められており、一燈会が新たなサービスを提供できる余地も増している。現に、2018(平成30)年の秋には、住宅型有料老人ホーム・短時間型デイサービスを中心として、クリニック、病児保育、リハビリ施設を併設した総合施設を開設する予定もあり、大変恵まれた事業環境にある地域といえる。

しかし大切なことは、どのような事業を始めるにせよ、そこには必ず経営上のリスクがあり、それを踏まえた上で「決断する勇気」があるか、ということである。

社会福祉法人にも「経営」が必要だ、という議論が盛んになされるが、経営には必ず「決断」が伴う。そこを乗り越えられずに、新規事業のチャンスがあるにもかかわらず見逃してしまう法人や、行政から紹介された案件のみを実施する法人が少なくないのが現状である。

それに比べて一燈会の場合は、地域にニーズのある事業に対して、勇気を持って果敢にチャレンジしてきた結果、現在のように多様なサービス種別を複合的に提供できるようになったといえる。

そして何よりも、「経営を通じて地域や利用者の役に立つ」という熱い思いが、創業者である山室清氏、現理事長の山室清彦氏、常務理事の山室淳氏ら経営陣のDNAとして一貫して引き継がれていることが重要である。その思いが、医療法人の高田医師を始めとした素晴らしい「人財」を引きつけ、新たな福祉のあり方を拓く原動力ともなっている。

社会福祉法人一燈会の動向に今後も注目していきたい。(記:2017年7月14日)

▶▶▶ 社会福祉法人一燈会のホームページはこちら

▶▶▶ 社会福祉法人一燈会の求人情報はこちら(ウェルな求人)