「PAPS(ぱっぷす):ポルノ被害と性暴力を考える会」による相談・支援活動

行動し、発信する社会福祉士たち

~「PAPS(ぱっぷす):ポルノ被害と性暴力を考える会」による相談・支援活動の紹介~

アドルトビデオへの出演強要や児童ポルノなどの被害にあった女性や男性からの相談を受け付け、DVDの販売停止・回収やネット動画・画像の削除などの支援活動を行っているPAPS(ぱっぷす、People Against Pornography and Sexual Violence:ポルノ被害と性暴力を考える会)というNPO法人がある。

そのPAPSで、被害者からの相談支援に注力している社会福祉士たちがいる。相談支援の専門家としてソーシャルワークの技法を駆使しながら、被害者に寄り添い、問題解決に向けた取り組みを実践している。

ポルノや性被害という問題に社会福祉士が関わることの意義や、活動を維持するために必要なことなどを、PAPS理事長の田口道子さんに聴いた。

【被害者に相談を呼びかけるPAPSのHP】(URL : https://paps.jp/)

※画像をクリックすると、PAPSホームページが表示されます。

立ち上げのきっかけから相談支援を開始するまで

PAPS立ち上げのきっかけは2008年にひるがえる。

子ども向け良書を出版してきた理論社が、暴力的なアダルトビデオの制作者として知られる監督を執筆者として、青少年向けに性について語らせる著作が出版されたことに対して、婦人保護施設の現場から抗議の声が上がった。当時、婦人保護施設の施設長であった田口さんも出版差し止めを求めて1万人以上の署名を集めたが、出版社との話し合いは決裂に終わった。

この結果を踏まえ、「一出版社の問題としてではなく、女性や子どもへの性被害を軽視している社会のあり方を考えなければいけない」という問題意識から、翌年の2009年にPAPSが設立された。

設立メンバーは、田口さんの他に、婦人保護施設で支援にあたっている社会福祉士や、ポルノ被害の問題に取り組んできた活動家などであった。設立後は年に1回、公開シンポジウムを通じてポルノ被害・性暴力被害に関する啓発活動を行ってきた。

2010年には、それまでの活動成果をまとめて、東京都社会福祉協議会から「証言・現代の性暴力とポルノ被害~研究と福祉の現場から~」を発行している。

相談支援を開始するきっかけとなったのは2012年に他団体から寄せられた案件への対応であった。しかし、当時はポルノ・性暴力被害への相談支援に関するノウハウの蓄積が乏しく、結果として被害者との関係が途切れてしまった。

翌年の2013年には、メールで寄せられた相談に対して、ソーシャルワークの技法を駆使した介入をすることで被害者の主訴をかなえることにつながる成果を上げることができた。その成果を踏まえて2014年にホームページ上での相談受付けを開始すると、アクセス数が数万件に上り、同じような被害にあった多くの相談者から連絡が来るようになった。

2015年からは、NPO法人「人身被害者サポートセンターライトハウス」と事業提携をして「AV被害者相談支援事業」を開始し、相談体制を整備することで相談件数が飛躍的に伸び、2017年6月には累計380件となった。

2017年8月からは協働事業を解消し、それぞれが独立して相談支援を行っている。PAPSでは、12月10日にNPO法人化をして、支援活動の組織的な継続を目指すことになった。

【相談実績の推移】

※ 2017年は1月~11月までの実績
※ 2014年~2017年8月まではライトハウスとの協働事業の実績。2017年9月以降はPAPSによる相談実績

相談支援の理念と社会福祉士としての関わり

PAPSの掲げる相談支援の理念は、「人としての性的尊厳を冒された人の人権回復をめざす」というものであり、被害者の声に耳を傾け、本人が望む解決策の実現をサポートしている。

特徴的なことは、「支援者がストーリーを作らない」という方針のもと、匿名での相談も受付けていることだ。相談者の中には精神的に孤立して、「死にたい」とだけ訴える人もいる。まずは相談者に「あなたは一人ではない」ということを分かってもらい、相談者自身からの要望があって始めて具体的な支援に動くこととしている。

田口さんによると、このプロセスにおいて相談支援の専門家としての社会福祉士の本領が発揮されるという。バイステックの7つの原則に示されている「個別化」、「受容」、「利用者の自己決定」、「秘密保持」など、ソーシャルワークの基本的な技法を用いて、相談者が安心して本音を話すまで寄り添うことが、支援の具体化につながっている。

なかには緊急介入をするケースもあるが、社会福祉士がじっくりと聞き取りを行うことが、弁護士などによるその後の支援に活かされているという。

相談者の状況は深刻だ。AV出演が暴露されて「職場や学校に居づらくなった」、「離婚された」、「解雇された」、「精神科に通院するほどの心的トラウマ状態になった」などの訴えが多く寄せられる。なかには相談を受けながらも自死してしまうケースもあった。

また、昼夜問わず相談に応じており、深夜にホームページを検索していた相談者が明け方に連絡してくることも多い。

相談を通じて本人が具体的な解決を希望すれば、弁護士によるプロダクションとの出演や販売の停止に関する交渉や、IT技術者による動画削除などの専門的支援につなげている。

PAPSの活動を支える人々

こうしたPAPSの活動は多くの関係者により支えられている。

法学者の中里見博氏や作家の北原みのり氏は、活動のアドバイザーであるとともに法人の理事として運営にも携わっている。弁護士の笹本潤氏は、PAPS経由のAV被害裁判を多く引き受けている。

そうした関係者の一人でPAPSの相談役をつとめる宮本節子氏(元日本社会福祉事業大学付属日本社会事業学校専任教員)は、相談案件に関するスーパーバイズを行うとともに、自らの著書の印税や講演料などをPAPSの活動費に寄付している。

【宮本節子氏の主な著書】

・「AV出演を強要された彼女たち」ちくま新書 2016年
・「ソーシャルワーカーという仕事」ちくまプリマー新書 2013年
・「婦人保護施設と売春・貧困・DV問題-女性支援の変遷と新たな展開-」(共著)
明石書房 2013年 

※宮本氏の印税はPAPS活動費に寄付される。

PAPSの相談員はボランティアでの活動が主となっていることから、相談件数の急増に対して相談員の数が追いついていない現状もある。理事長の田口さんを始め、数人の社会福祉士が案件を掛け持ちして対応している状況になっている。

ポルノや性暴力による被害者からの相談支援というテーマの特殊性もあり、社会福祉士の資格を持っていても、被害者に上手く対応できる相談員が少ない現状もある。田口さんや他の相談員が婦人保護施設での勤務実績があり、DV被害や買春被害にあった利用者の支援経験が豊富なことが、PAPSでの相談支援の必要条件にもなっている。

また、法人の運営面では、NPO法人化した現在でも活動を支えるための財政基盤の強化が課題となっている。各種団体や個人からの寄付で活動資金を賄っているが、相談件数の増加に対応できる体制の充実には至っていない。

PAPSでは、サポーター会員として登録してもらえる方を募集している。年間1口1,000円からの会費を支払うことで、PAPSの活動を支えることができる。

また、寄附口座も開設しており、①毎月の寄付、②毎年の寄付、③その都度寄附、のいずれかから寄付の方法を選ぶことができる。

【PAPSサポーター・寄附について】

PAPSの活動趣旨に賛同する方には、是非、サポーター登録または寄附をお願いしたい。

きわめて現代的な課題に対する社会福祉士としての役割

ポルノ被害・性暴力被害の問題は、被害がウェブで拡散したり、被害者もメールで相談をしてくるなど、きわめて現代的な現れ方をしている。PAPSでもホームページを通じて被害者に相談を呼びかけたり、IT専門スタッフによる画像削除など、ウェブに対応した取り組みを実践している。

社会福祉士によるアウトリーチ支援の必要が叫ばれているが、被害を訴えられずに悩んでいる被害者に対してウェブ上での開かれた窓口を通じて支援を提供するPAPSの活動は、現代における新たな社会福祉士のロールモデルとして注目に値する。自ら行動し、発信するソーシャルワーカーとしての姿がそこにはある。

これからも、PAPSのさらなる活動の充実に期待したい。

PAPS・問い合わせ先

〒113-0023 東京都文京区向丘2-27-6 2F

相談電話番号:050-3177-5432

e-mail : paps@paps-jp.org  ホームページ : https://www.paps-jp.org