高齢者・障害者児が利用する共生型サービスが機能する条件とは

共生型サービスの基準や報酬に関する検討がスタート

2017年7月5日の社会保障審議会介護給付費分科会において、介護保険と障害福祉のサービスを同一の事業所で一体的に提供する「共生型サービス」の基準や報酬に関する検討がスタートしました。

高齢者と障害者・児を一つの事業所が受け入れ、多様な利用者がともに過ごす本サービスの利点については、先駆的な取組みを実施している「富山型デイサービス」の事例などで紹介されていますが、利用者・事業者の双方にとって有益なサービスとして機能するためにクリアすべき条件があります。

今回は、共生型サービスが機能する条件について整理します。

クリアすべき条件1:介護保険サービスと障害者福祉サービスの給付水準・自己負担の違い

クリアすべき条件の1つ目は、介護保険サービスと障害者福祉サービスとでは、給付水準と自己負担が異なることから、障害をもつ利用者が65歳以上になり、障害者福祉サービスから介護保険サービスに切り替えをした場合に、受けられるサービスの量が抑制されたり、自己負担の増加による経済的な負担が発生することがあります。

 介護保険障害者福祉
給付水準支給限度基準額の範囲内で支給。超えた部分は自己負担(軽減措置あり)
要支援1:50,030円
要支援2:104,730円
要介護1:166,920円
要介護2:196,160円
要介護3:269,310円
要介護4:308,060円
要介護5:360,650円
給付上限なし
経済的負担保険料負担:負担能力に応じて9段階を設定(第6期平均5,514円)
自己負担:1~2割
以下の区分に応じた自己負担
生活保護:なし
低所得(住民税非課税):なし
一般1(住民税所得割16万円未満):9,300円
一般2(上記以外):37,200円

このうちサービスの給付水準については、厚生労働省が必要と判断される場合には介護保険サービスと障害者福祉サービスの併給を認める通知を発出するなど、利用者個別の状況に応じたサービスの提供が図れるようになっています。

しかし、自己負担の問題については、現在のところ抜本的な解決策が示されてはいません。今後、検討が進むことが期待されます。

クリアすべき条件2:個別のケア・支援内容の充実のためのサービス提供能力の向上

2つ目の条件は、高齢・障害の双方に対するサービス提供能力の向上が事業者に求められることです。

食事・入浴・排泄・移乗・認知症対応など、高齢者介護で求められる「ケア」の領域におけるサービスと、知的障害や精神障害などの多様な背景を持つ障害者の「個別支援」では、職員に求められる知識・スキルや、建物・設備などのハード面で求められる専門性が異なります。

もちろん、共通に活かせる部分もありますが、従来のサービスや支援に加えて、利用者個別の状況に配慮することが必要になります。

各事業者における職員研修の実施や設備の仕様変更・追加など、共生型サービスにふさわしい準備を進めることが必要です。

クリアすべき条件3:高齢障害者の居住の場の確保

3つ目は、高齢障害者の居住の場の確保です。

共生型サービスの対象は、訪問介護やデイサービスなど利用者の在宅生活を支えるサービスが設定されています。しかし、高齢障害者については、経済的な理由や一人暮らしが困難といった理由から、在宅生活よりも施設入所やグループホームで生活しているケースが多いのが現状です。

高齢障害者の方が、共生型サービスを利用しながら、住み慣れた地域での在宅生活を継続するためには、ハード面でも安全で、見守り機能などもあり、さらには経済的にも負担が少ない居住の場の確保が課題となります。

クリアすべき条件4:ケアマネジャーと相談支援専門員の連携などコーディネート機能の強化

最後の条件は、利用者一人ひとりに最適なサービスを提供できるよう、介護保険のサービスを調整するケアマネジャーと障害福祉サービスの調整を行う相談支援専門員との連携を図り、コーディネート機能を強化することが挙げられます。

高齢障害者が介護保険を新たに利用する場合、従来受けていたサービスの水準を落とさないためには、介護保険で相応するサービスの提供を確保するとともに、足りない部分は障害者福祉サービスの提供を維持するといった調整が必要となります。

あわせて利用者の経済的な負担への配慮を行う必要もあります。

ケアマネジャー、相談支援専門員の双方が、両サービスの体系や自己負担について熟知するとともに、利用者の引き継ぎを円滑に行っていくことが求められます。

共生型サービス創設の趣旨を実現するために

以上のようにクリアすべき条件はありますが、「地域の中で、高齢者も障害者児も皆がともに生きていく」という共生型サービス創設の趣旨を実現するためにも、課題を克服し、必要とされる利用者の方々に安心して利用できるようなサービスとして発展していくことに期待します。

▶▶▶ 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」第142回(平成29年7月5日)の資料へはこちら