平成30年4月における障害分野の制度改正のインパクト

平成30年同時改定の最大のインパクトとは

現在、平成30年4月の診療報酬・介護報酬の同時改定をめぐる中央社会保険医療協議会および社会保障審議会介護給付費分科会での議論が進められています。

しかし、平成30年4月に改定されるのは診療・介護報酬のみではなく、障害者福祉サービスに関する報酬も改定されることをご存知でしたでしょうか?

障害分野では、サービスの報酬改定に加えて、障害者総合支援法の改正があわせて実施されます。そこでは、新たなサービスの創設や、高齢障害者が介護保険サービスを円滑に利用できるような見直しも予定されています。

障害分野における見直しの方向性として、地域における支援の拡充を目指すアウトリーチ支援が指向されており、新たなサービスの創設という点で、医療・介護分野を上回るインパクトが予測されます。

しかし、このことは障害福祉の関係者には広く周知されているようですが、医療・介護の関係者にほとんど知られていません。

そこで、本記事では、平成30年4月からの障害福祉分野の制度改正の内容を解説するとともに、医療・介護サービス事業者にもたらす影響について分析してみます。

平成30年4月における障害福祉分野の制度改正の概要

平成30年4月における障害福祉分野の制度改正のポイントは、

1.「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)及び児童福祉法の一部を改正する法律」の施行

2.個別サービスにおける見直し(「放課後等デイサービス」及び「就労継続支援A型」)

3.第5期「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」の策定(計画期間:平成30~32年度)

4.障害者福祉サービス報酬改定

の4つです。

1の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)及び児童福祉法の一部を改正する法律」の施行は、障害者・障害児の地域生活を支えるための新サービスの創設等を含んでおり、今回の制度改正の目玉となっています。

2の「個別サービスの見直し」については、社会福祉法人だけでなく数多くの民間企業も参入している「放課後等デイサービス(6~18歳の障害を持つ児童を対象に、自立支援や創作活動などを提供するサービス)」と「就労継続支援A型(障害者を直接雇用して、生活支援と就労提供を同時に提供するサービス)」における質の担保・向上のための見直しが行われます。

具体的には、放課後等デイサービスでは、職員配置の見直しとサービスガイドラインに沿った自己評価結果の公表が求められます。就労継続支援A型では、行政における新規指定の規制、利用者の希望や能力を踏まえた個別支援計画作成の徹底、賃金支払いにおける指定基準の規定などが実施されます。

3の「第5期『障害福祉計画』及び『障害児福祉計画』の策定」では、計画作成上の基本指針として、

① 地域における生活の維持及び継続の推進

② 就労定着に向けた支援

③ 地域共生社会の実現に向けた取り組み

④ 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築

⑤ 障害児のサービス提供体制の計画的な構築

⑥ 発達障害支援の一層の充実

といったテーマが設定されており、障害者・障害児に対する地域生活支援や支援対象の拡がりに関する目標設定がなされる予定です。

4の「障害者福祉サービス報酬改定」については、診療報酬・介護報酬と同様に障害サービスの種別ごとに設定されている基本報酬や加算報酬の改定について、平成29年度において検討を進めて、平成30年4月から適用されることになります。

進む地域生活支援の充実

上記の制度改正の中で最も注目されるのが、1の障害者総合福祉法と児童福祉法の改正であり、障害者総合支援法の改正に関連する内容として、以下の4項目が「障害者の望む地域生活の支援」のための施策として提示されてます。

(1)地域生活を支援する新たなサービス:自立生活援助の創設

〇 施設やグループホーム等から一人暮らしへの移行を希望する者に対して、

〇 1年間、定期的な巡回訪問や随時の対応により、生活状況を確認しながら必要な支援を行うサービス

⇒ 障害者の施設から地域への移行が求められる中で、一人暮らしの継続につながる支援を提供していくことを目的としています。生活リズムの確立・維持、家事や経済面での生活状況の安定、関係機関との調整などが主たる業務として想定されています。

(2)就労定着に向けた支援を行う新たなサービス:就労定着支援の創設

〇 一般就労後に生活面での変化が生じている者に対して、

〇 3年間、就職先企業や家族との連絡調整等の支援を行うサービス

⇒ 就労移行支援等の利用を経て一般就労したが、環境面の変化により生活リズムや体調管理に課題が生じた場合に、就職先企業とのやり取りを含めた支援を行うことが主たる業務となります。

(3)重度訪問介護の訪問先の拡大

〇 四肢麻痺及び寝たきりの状態にある等の、最重度の障害者に対して、

〇 入院・入所中の医療機関(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院)においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用できるようにするも

⇒ 最重度の障害を有する者に対する適切な介護方法や環境設定などを、医療機関の中でも実施できるよう、サービスの拡充が図られることになります。

(4)高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用

〇 65歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた者が、介護サービスを利用する場合に、

〇 障害程度区分(2以上)や所得の状況により、介護保険の利用者負担を軽減する仕組みを設ける

⇒ 障害高齢者が適切な介護サービスを受けることができるよう、経済的な負担を軽減することを目的としていますが、介護と障害福祉の両方のサービスを提供できる「共生型サービス事業所」の新設など、介護と障害のサービスの垣根を低くする仕組みの一環でもあります。

障害児支援にも地域の視点を導入

次に、児童福祉法の改正に関連する内容としては、以下の4項目が「障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応」として提示されてます。

(1)居宅訪問により児童発達支援を提供するサービス:居宅訪問型児童発達支援の創設

〇 重症心身障害児などの重度の障害児で、通所支援を受けるために外出することが困難な者に対して、

〇 居宅を訪問して、感覚訓練や言葉の理解などの必要な訓練を実施する

⇒ 通所が困難な障害児に対する発達支援を受ける機会の提供が目的とされています。

(2)保育所等訪問支援の支援対象の拡大

〇 保育所・幼稚園、小学校に通う障害児に加えて、乳児院、児童養護施設に入所している障害児も対象として、

〇 他の児童との集団生活への適応に関する専門的な支援を行う

⇒ 障害児が利用している施設の職員とも協力しながら、専門的な発達支援の実施を拡げていくことを目的としています。

(3)医療的ケアを要する障害児を支援するための体制の充実

〇 人工呼吸器の使用などによる医療的ケアが必要な障害児が、

〇 居宅にいながら適切な支援を受けられるよう、自治体において保健・医療・福祉の連携促進に努める

⇒ 在宅看護や保育所への看護師配置など、医療的ケアを必要とする障害児へのサービス提供体制の充実を目的として、自治体における取組みを促すものとなっています。

(4)自治体における障害児福祉計画の策定

〇 障害児通所・入所支援などのサービス提供体制を計画的に確保するため、

〇 都道府県および市町村が障害児福祉計画を策定し、サービス提供にかかる目標を設定

⇒ 自治体の計画に位置付けることにより、サービス確保を促進することが目指されています。また、児童発達支援および放課後等デイサービスについては、計画を上回る場合の総量規制についても盛り込まれます。

医療・介護分野への影響は?

こうした障害分野の制度改正が医療・介護分野に及ぼす影響とはどのようなものでしょうか?

まず1つ目は、新規事業としての可能性ということです。

例えば、既存のデイサービスが共生型サービス事業所としての指定を受けることで、高齢の障害者を受け入れて介護サービスを提供することが可能になります。訪問介護事業所からの在宅の障害者への訪問サービスを充実させていくことなどもイメージしやすいと思います。

また、全くの新規事業として障害福祉サービスに参入するケースもあります。この場合は、今回の法改正により新設されるサービスに関わらず、既存の生活介護や就労継続支援B型なども対象に含まれます。

現に、これまでは医療や介護分野のみで事業を実施していた事業者が、障害分野の新規事業を始めるケースも多くなっています。ただし、この場合には、地域におけるサービス提供事業者が不足していることが条件になります。

いずれにしても、既存の事業所の機能を生かしたサービスの拡充に結び付けることができる場合や、地域において他にサービス提供をしている事業所が少ない場合には、新規事業の展開を検討する価値はあります。

2つ目は、地域包括ケアシステムの中で存在感を発揮するために、障害分野のサービスとの連携強化が求められていることです。

地域包括ケアシステムは医療・介護分野のみを対象とした仕組みではなくなり、福祉サービスのトレンドであるアウトリーチ型支援の展開を図るために、医療、介護、障害、子育て支援といった多様なサービスを、利用者のニーズに合わせて適切にコーディネートするための包括的な枠組みとして整備されようとしています。

利用者からの相談を受けるなかで、顕在化していない支援ニーズをつかみ、自ら支援を提供したり他の社会資源につなげていくことができる事業所が、地域において存在感を発揮することになります。そのためには他の事業所が実施しているサービスの内容を把握をしたうえで、気軽に相談できる協力関係を築いておくことが求められます。

今回の制度改正について理解を深めて、事業所での取り組みについて検討を進めることをお勧めします。

平成30年4月の障害分野の制度改正に関する資料はこちらから▶▶▶厚生労働省「社会保障審議会障害者部会(第85回)」